生涯の研究目標としている『因果応報』もしくは『輪廻転生』の科学的原理……すなわち『心理遺伝』の結論として、是非ともこの実験の成績を取入れねばならぬと、あくがれ望んでいるその熱度は、当の相手のWが心血を傾注している名著『精神科学応用の犯罪とその証跡』の実例として、この絵巻物の魔力を取入れたがっているその熱度に、優るとも劣る気遣いはなかった。それ程の研究価値と魅力とをこの絵巻物が持っている事を、Wはどこまでも信じて疑わなかったのだ。
 ……けれども……けれども……Mはそれでも尚《なお》、どれくらい深刻な煩悶をその以後に重ねた事か。学術のために良心を犠牲にして、罪も報《むくい》もない可憐の一少年が、生きながら魂を引き抜かれて行くのを正視する……その生きた死骸を自分の手にかけて検査する……そうしてその結果を手柄顔に公表する……という決心がドレ位つき難《にく》い事を思い知ったか。彼が大学卒業後の十数年間に於ける死物狂いの研究は、こうした良心の苛責を忘れたいという一念からではなかったか……自分が死刑立会人である苦痛を忘れるために、一心不乱に断頭刃《ギロチン》を磨《みが》くのと同じ悲惨な心理のあらわ
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