から帰って来た。いつかはその絵巻物の魔力……六体の腐敗美人像に呪咀《のろ》われて……学術の名に於てする実験の十字架に架けられて、うつつない姿に成果《なりは》てるであろう、その可愛らしい男の児の顔を眼の前に彷彿させつつ……同時にその母子《おやこ》の将来に、必然的に落ちかかって来るであろう大悲劇に直面した場合に、ビクともしない覚悟と方針とを考えまわしつつ……」
「……………」
「……彼は松園の隠れ家に何喰わぬ顔をして帰って来ると、何も知らずに添乳《そえぢち》をしているT子に向って誠しやかな出鱈目《でたらめ》を並べた。……絵巻物は和尚か誰かが、取出してどこかに隠したものと見えて、弥勒様の胎内にはモウ見当らなかった。しかしこっちから請求して貰って来る訳にも行かない品物なので、そのまま諦らめて帰って来た。いずれ自分が学士になって大学に奉職する事にでもなったならば、その時に大学の権威で、学術研究の材料として提供させても遅くはないであろう。ところで絵巻物の問題はそれでいいとして、実は自分の故郷の財産の整理がこの歳暮に押し迫っているので、困っている。兎《と》にも角《かく》にも大急ぎで帰って来なければな
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