間の名前が、ウッカリ歯から外へ出されない事も、直ぐに考え付く筈じゃないか。……何という軽率さだ」
「……………」
「況《いわ》んや本人は既に……一切を自白している」
「……エッ……エッ……」
私は愕然として顔を上げた。
見ると正木博士は、青いメリンスの風呂敷に包まれた調査書類を、右手でシッカリと押え付けながら、冷然として唇を噛んでいた。それは何の意味か知らず、或る神聖な言葉を発する前提と思われる。その緊張した態度に打たれて、私は又も頭を垂れてしまった。
「その自白の記録が、この調査書類である。これは本人が、自分で犯した罪跡を、自分で調査して吾輩に報告したものだ」
……スラリ……と冷めたいものが一筋、私の背中を走り降りて行った。
「……君はまだ犯罪の隠蔽心理とか、自白心理とかいうものが、ドンナものだか詳しくは知るまいが……よく聞いておき給え。人間の智慧が進むに連れて……又は社会機構が、複雑過敏になって来るに連れて、こんな恐ろしい犯罪心理が、有触《ありふ》れたものと成って来るに、きまっているんだから……よろしいか……」
「……………」
「……この調査書が如何に恐るべきものであるか……
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