、お差支えありませんね」
「それは無論、君の自由だ。御随意に遊ばせだが……」
「ありがとう御座います。それじゃ済みませんが、僕を此病院《ここ》から解放して下さい。ちょっと出かけて来たいのですから……」
 と云ううちに私は立上って、卓子《テーブル》の端に両手を支《つ》いてお辞儀をした。しかし正木博士は平気でいた。お辞儀を返そうともしないまま悠々と椅子に踏反《ふんぞ》り返って、葉巻の煙を思い切り高々と吹上げた。
「出かけるって、どこへ出かけるんだい」
「どこだか、まだ考えていませんけど……帰って来る迄には事件の真相を根こそげ抉《えぐ》り付けてお眼にかけます」
「フフン。抉り付けて胆を潰《つぶ》すなよ」
「……エッ……」
「この絵巻物の神秘は、お互いに破らない方がよかろうぜ」
「……………」

 私は思わず立竦《たちすく》んだ。そういう正木博士の態度の中には、私を押え付けて動かさない或る力が満ち満ちていた。……曠古《こうこ》の大事業……空前の強敵……絶後の怪事件……そんなものに取巻かれて、嘘か本当か自殺の決心までさせられながら、それを片《かた》ッ端《ぱし》から茶化《ちゃか》してしまっている。
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