れども、君はどうしても過去の記憶を思い出さないのだから仕方がない。きょうの実験はこれで中止だ。つまり君の頭が、そこまで回復していないのだから、この上、実験を続けても無駄だと吾輩は……」
「しかし……それじゃ最前のお約束に……」
「約束はしたが仕方がない。お互いに無駄骨を折るよりも、今すこし君に休養してもらってから、今一度実験をやり直す事に……」
「待って下さい……チョット……それじゃ先生は、その神秘の正体をスッカリ御存じなんですね」
「そうさ。知っているからこそ、君と関係があると云うんじゃないか」
「……じゃ……それをスッカリ僕に話して下さい」
「……イケナイ……」
正木博士は、こうキッパリと云い切ると、葉巻を横ッチョに啣《くわ》え直した。腕を組んで反《そ》り返りつつ冷やかに笑った。すこしムッとしている私の顔を見ながら……。
「……何故って考えて見給え。この事件の神秘の正体を明かにするためには、是非とも呉一郎を発狂させた犯人の名前を明かにする必要があるだろう。ところがその犯人の名前は、君自身か、呉一郎か、どちらかが過去の記憶を回復すると同時に思い出したのでなければ、真実《ほんもの》と
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