く、思いもかけぬ次の室《へや》から、真赤な服を着けた綽約《しゃくやく》たる別嬪《べっぴん》さんが馳け出して来て……マア……アナタッと叫ぶなり抱き付いた」
「ヘエ――。それは誰なんですか一体……」
「よく見ると、それは、自分が手ずから絞め殺して白骨にして除《の》けた筈の黛夫人で、しかも新婚匆々時代の濃艶を極めた装おいだ」
「……オヤオヤ……黛夫人を殺したんじゃなかったんですか」
「まあ黙って聞け。ここいらが一番面白いところだから……そこで呉青秀はスッカリ面喰《めんくら》ったね。ウ――ンと云うなり眼を眩《ま》わして終《しま》ったが、その黛夫人の幽霊に介抱をされてヤット息を吹き返したので、今一度、気を落ち付けてよく見ると、又驚いた。タッタ今まで新婚匆々時代の紅い服を着ていた黛子さんが、今度は今一つ昔の、可憐な宮女時代の姿に若返って、白い裳《もすそ》を長々と引きはえている。鬢鬟《びんかん》雲の如く、清楚《せいそ》新花《しんか》に似たり。年の頃もやっと十六か七位の、無垢《むく》の少女としか見えないのだ」
「……不思議ですね。そんな事が在り得るものでしょうか」
「ウン。呉青秀も君と同感だったらしい
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