座いましたが……ヘヘイ……」
「アハハハハハハ。そうかい。若林がよこしたのかい。フーム……イヤ御苦労御苦労。若林が自分で持って来たんかい」
「イエ……あの、学部長様が先刻《さきほど》からお電話で御座いまして、正木先生がまだおいでになるかとお尋ねで御座いましたから、私はビックリ致しまして、如何か存じませぬがチョット見て参りましょうと申しまして、お室《へや》の外まで参りますと、お二人様のお声が聞えました。それで学部長様に左様《さよう》申し上げましたれば、それならば後から物を持たしてやるから、お茶受けに差し上げてくれいとのことで……ヘイ」
「ウン。そうかそうか。たしかに受け取った。暇なら話しに来いと電話で云っとけ。イヤ御苦労御苦労……入口の鍵は掛けなくともいいぞ」
「ヘヘヘイ。先生方がおいでになりますことはチョットも存じませんで……きょうは私一人で御座いますもんじゃけん、まだお掃除も致しませんで……まことに不行届きで……申訳御座いませんで……ヘイヘイ……」
 小使の爺《じじい》は二人の前に、危《あぶな》っかしい手附きで茶を注《つ》いで出すと、何遍もお辞儀しいしい禿頭を光らせて出て行った。
 
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