るべく、二階へ引返して来た訳だが、そのうちに夜が明けてから、やっと居睡《いねむ》りから眼を醒ました吾輩が、少々気抜けの体《てい》でボンヤリしていると、間もなく若林が例の新式サイレンの自動車で馳け付けて来る様子だ。……こいつは面黒《おもくろ》い。君が夢中遊行の状態から醒めかけている事を、早くも誰かが発見して若林に報告したと見える。ナカナカ機敏なものだが、扨《さて》馳け付けて来てドウするつもりか……となおも物蔭から様子を見ていると、若林は君の頭を散髪さして湯に入れて、堂々たる大学生の姿に仕立て上げてから、君の室《へや》と隣り合わせの六号室に入院している一人の美少女に引き合わせたろう。……しかも、それは君の許嫁《いいなずけ》だというのでスッカリ君を面喰《めんく》らわせたろう」
「エッ……それじゃあの娘は、やっぱり精神病患者……」
「そうさ。しかも学界の珍とするに足る精神異状さ。大事の大事の結婚式の前の晩にカンジンカナメの花婿さんから、思いもかけぬ『変態性慾の心理遺伝』なぞいう途方《とほう》トテツもない夢遊発作を見せられたために、吾れ知らずその夢遊発作の暗示作用に引っかけられて、その花婿さんと
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