お寺から盗み出して、あの石切場で待ち伏せして一郎に渡して、この家中の者を取り殺そうとたくらんだ奴を、ゼヒゼヒ探し出して下さいませ。そうして其奴《そやつ》が見付かりましたならば、タッタ一言でよろしう御座いますから、何の怨《うら》みでこのようなムゴイ事をしたかと(涕泣《すすりなき》)タッタ一言でよろしう御座いますからキットお尋ね下さいませ(涕泣)……一郎が正気でおりますうちにその人間の事を尋ね出し得ませなんだのが残念で残念で……わかったら骨を噛み砕いても飽き足らぬと(涕泣)……イエイエ。直方《のうがた》を引き上げる時には、そんな物は御座いませなんだ。一郎の身のまわりは、私が残らず調べております。……警察の奴が何が解りましょう。一郎をあんな非道《ひど》い眼に会わせたりして……私は尋ねられても返事もしてやりませなんだ。……私はもう諦らめました。一郎が正気になろうがなるまいが、娘が生き返ろうがかえるまいが、私の生命がどうなろうが知りません。ただ妹の千世と、一郎と、娘の讐敵《かたき》は同じ奴……この絵巻物の事情《わけ》を知りながら、あの一郎に見せた奴が……(昂奮、錯乱して問答を継続し得ず。爾後《や
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