とな》へけるが、やがて黒衣の雪を打ち払ひて、いざやとばかり仏像を負《お》ひ取り、人心《ひとごころ》も無き六美女をいたわり慰めつ、笠を傾け、人馬を急がして行く程もなく筑前領に入り、深江《ふかえ》といふに一泊し、翌暁まだ熄《や》まぬ雪を履《ふ》んで東する事又五里、此の姪の浜に来りて足をとゞめぬ。
虹汀此の所の形相《けいそう》を見て思ふやう。此地、北に愛宕《あたご》の霊山半空に聳《そび》えつゝ、南方|背振《せぶり》、雷山《らいさん》、浮岳《うきだけ》の諸名山と雲烟《うんえん》を連ねたり。万頃《ばんけい》の豊田|眼路《めじ》はるかにして児孫万代を養ふに足る可く、室見川《むろみがわ》の清流又杯を泛《うか》ぶるに堪《た》へたり。衵浜《あこめはま》、小戸《おど》の旧蹟、芥屋《けや》、生《いく》の松原の名勝を按配して、しかも黒田五十五万石の城下に遠からず。正《まさ》に山海地形の粋《すい》を集めたるものと。すなはち従ひ来れる馬士《まご》を養ひて家人となし、田野を求めて家屋|倉廩《そうりん》を建て、故郷|京師《けいし》に音信《いんしん》を開きて万代の謀《はかりごと》をなす傍《かたわら》、一地を相して雷山
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