に窓の所にかけておりました両手の力が無くなりましたようで、スッテンコロリと転げ落ちますと、腰をしたたかに打ちまして、立ち上る事も逃げ出す事も出来なくなりました。
 ――ヘイ。その時に見ました窓の中の光景《ありさま》は、一生涯忘れようとして忘れられません。そのもよう[#「もよう」に傍点]を申しますと、土蔵《くら》の二階の片隅に積んでありました空叺《あきがます》で、板張りの真中に四角い寝床のようなものが作ってありまして、その上にオモヨさんの派手な寝巻きや、赤いゆもじ[#「ゆもじ」に傍点]が一パイに拡げて引っかぶせてあります。その上に、水の滴《したた》るような高島田に結《ゆ》うたオモヨさんの死骸が、丸裸体《まるはだか》にして仰向けに寝かしてありまして、その前に、母屋《おもや》の座敷に据えてありました古い経机《きょうづくえ》が置いてあります。その左側には、お持仏《じぶつ》様の真鍮《しんちゅう》の燭台が立って百|匁蝋燭《めろうそく》が一本ともれておりまして、右手には学校道具の絵の具や、筆みたようなものが並んでいるように思いましたが、細かい事はよく記憶《おぼ》えませぬ。そうしてそのまん中の若旦那様
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