幻視[#「自己の屍体幻視」に傍点]」と称する変態心理は、夢中遊行に非ざる一般の場合に於ても、特異中の特異例に属すべきものなるを以て、その斯《かく》の如き変態にまで陥り来りたる心理経過を一々説述し来るは容易の業《わざ》に非ず。然れども当座の参考のためにこれを要約して説明すれば、元来性慾もしくは恋愛なるものは、自己以外の異性に恋着する心理を指すものなれども、これをその本源に溯《さかのぼ》りて考察する時は、如何に没我的なる恋愛、もしくは性慾の発露なりと雖《いえど》も、畢竟《ひっきょう》するところ、自己の生ける霊肉の要求を愛惜し尊重する本能的主義的、もしくは利己的心理の表現に外ならず、故に、その性慾もしくは恋愛が、体質、性格及び境遇等に影響されて常住不断に飽く能《あた》わず……又は飽く方法を知らず……又は飽く事を知らざる(これと正反対なる性慾|耄衰《ぼうすい》の場合にも略《ほぼ》同一の結果に達すれどもここには省略す)場合は、その欲求が極度に高潮尖鋭化し、深刻痛烈化し来る結果、遂《つい》に尋常の手段にては満足を得る能《あた》わず、窮極するところ遂《つい》に変態性慾の境界に脱線し去りて尚《なお》飽
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