》上手で、私の処にある下絵の中でも良いのは大抵写して行かれました。けれどもかれこれ半年余りかよって来たと思うとパッタリ見えなくなりました。エ……その時姙娠の模様は見えなかったかって……いいえ、小柄な方でしたから直ぐに判る筈ですが……その色男が虹野さんを棄てて逃げたのですって? ヘエー左様ですか。ヘエー……。
――その頃住んでいた家ですか。サア、それは存じておればですが……その頃いた生徒はみんなもう四十近くのお婆さんになっているんですからネエ。ヘヘヘヘヘ。マア、その男が虹野さんを殺したらしいんですって。……おお怖《こ》わ! あんな別嬪さんを、まあ惜《おし》いこと……そういえば思い当る事があります。誰にも仰言《おっしゃ》っては困りますがね。虹野さんは大変な男喰いで、大学生の中でも失恋させられた人が二三人あったそうですよ。尤《もっと》もこれは噂だけですがね。その頃の虹野さんの家《うち》もどこか判らず、東から来たり西から来たり、帰りがけもその通りで、誰も本当の家《うち》を知っているものはありませんでしたよ。私の塾には品行の悪い人は一切入れませんでしたが、そんな風でどこが悪いといって取り止めた
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