朝の御飯も頭が痛むのでそのままにしていましたが、あんまりお腹が空《す》いて来ましたので、お昼のを頂きますと大変にお美味《いし》くて頭の痛いのがすっかり癒《なお》りました。それから夕方になりますと、僕の母ソックリの女の人が面会に来ましたのでビックリしましたが、それはこの伯母でしたので、僕は生れて初めて会った訳なのです。その時にこの伯母も先生(W氏)と同じ事を云いました。「何か夢を見ていやしなかったか」って……。けれどもその時はどうしても思い出せなかったものですから、何も知らないと答えました。……でも麻酔剤を嗅《か》がされていた事なんか、ちっとも知らなかったものですから……。
 ――あくる日になると先生(W氏)がお出《い》でになるし、中学にいた時の僕の受持ちの鴨打《かまち》先生も会いに来て下さいました。その又あくる日になったら裁判所からも人が来て親切にいろんな事を聞いたりして何だか赦《ゆる》されそうなので、僕は母がどんなになっているか、見に行きたくて堪《たま》りませんでしたが、一昨日《おととい》帰って見ますと、母の遺骸《からだ》はもう火葬にしてありましたのでガッカリしました。僕の家《うち》
前へ 次へ
全939ページ中491ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング