になりましたので、そのまま勝手口に来て、母が平生穿《ふだんば》きにしておりました赤い鼻緒《はなお》の下駄《げた》を穿いて横路次に出ました。その時に、もしや母はもう死んでいるのじゃないか知らんと思いましたから、ハッとして立止って左右を見ましたら、両手を押えている男というのは、顔だけよく知っている直方署の刑事と巡査で、怖い顔をして僕を睨みつけながら、グングン両手を引張って行きましたから、何も尋ねる事はできませんでした。
――往来は眩《まぶ》しい程日が照っていましたが、家の前には大勢の人が集《たか》っていて、僕が出て行きますと一斉にこっちを見ました。近くにいる人は逃げ退《の》いたりしましたが、僕はそんな人達の黄色く光っている顔を見ますと、又、眼がまわって倒れそうになりました。それと一緒に、頭の中がシインと痛くなって嘔《は》きそうになりましたので、額《ひたい》を押えようとしましたが、両手を押えられているので何も出来ません。その時に母は病気じゃない。殺されるかどうかしていて自分に疑《うたがい》をかけられているのだなと思いましたから、そのまま温柔《おとな》しく引かれて行きました。
――僕はその
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