、背広を着た人と、サアベルを引きずった巡査とが母の枕元に跼《かが》まって、何か調べているようでした。
――それを見ると僕は、キット母が虎烈剌《コレラ》か何かに罹《かか》ったのに違いない。そうして僕も同じ病気になっているから、こんな身体《からだ》の具合が変なのだろうと半分夢うつつのように思い思い、二人の男に引っぱられて行きましたが、その時の苦しかった事は未《いま》だに忘れません。何だか身体中が溶けるように倦《だ》るくって、骨がみんな抜け落ちそうで、段々を一つ降りる毎《ごと》に眼の前が真暗になって、頭の中が水か何ぞのようにユラユラして痛みます。それを立止まって我慢しようとしますと、下から急に片手を引っぱられましたので、思い切って転がるように段々を降りて行ったのですが、その途中でヒョイと顔を上げますと、階子段《はしごだん》に向い合った頭の上の手摺《てすり》から、私の母の色の褪めた扱帯《しごき》が輪の形になってブラ下がっているのが眼に這入りました。
――けれどもその時は、それが何故そうしてあるのか考える力もありませんでしたし、そのうちに又附いている男からヒドク小突かれて眼が眩《くら》みそう
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