すが、こればかりは、どうしても私の力に及びませぬので……」
「イヤ。わかったわかった。重々相わかった。流石《さすが》は一代の名法医学者だ。よいところへお気が付かれました……かね。ハハハハ。イヤ引受けた。たしかに引受けた」
「ドウモ……まことに……」
「ウンウン。心得た心得た。万事心得た。最早《もう》この事件をスッカリ頭から取り去て悠々自適の裡《うち》にビタミンを摂取したまえ……イヤ、ビタミンといえば、どうだい一ツ今から吉塚へ鰻《うなぎ》を喰いに行かないか。久振りに一杯……といっても、飲むのは吾輩だけだが……まあいいや。この事件に対する君の慰労の意味で……」
「ハイ、それはどうも……しかし、その少年の精神鑑定にはいつ頃御出張願えましょうか。私から裁判所へ通告致しておきますが……」
「ウン。それあいつでもいいよ。何も面倒な事じゃない。その少年の面《つら》をたった一目見ただけで、コレは殺人狂でも偽狂でも御座らぬ。しかし、なお細かい鑑定のために入院させる必要が御座るというので、この精神科へ連れてくる手筈が、今からチャンときまっているから他愛《たあい》ないね。若林博士の評判地に落ちるに反して、正
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