を使って呉一郎に暗示を与えた人間……」
「アッ……ナルホドね。そんな人間がもし居るとすれば、其奴《そいつ》はトテモ素晴しい新式の犯罪者だよ。たしかに君の受持だね。そいつを探り出すのは……」
「さようで……けれども、この一点が今のところではカイモク判りませぬために、事件の全体が隅から隅まで、神秘の雲に奥深く包み込まれた形になっておりますので……」
「それあそうだろうさ。心理遺伝に支配された事件は大抵神秘の雲に包まれたっきり、わからず仕舞《じまい》になるのが、昔からの吉例になっているんだからね。新聞に出た奴だけでも、どれ位あるか判らん」
「しかし……私が考えますと、今度の事件に限っては、その神秘の雲を破り得る可能性がありますようで……と申しますのは外でも御座いませぬ。その最後の疑問の一点というのは、必ずやその少年の記憶の底に……」
「ヤッ……わかったわかった。重々|相判《あいわか》った……つまりその少年の精神状態を回復さしたら、その絵巻物を見せてくれた人の顔や姿を思い出すだろう……だからその記憶を探し出す目的で、とりあえず精神鑑定をやってくれというのだろう」
「さようで……まことに恐入りま
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