かという事は、ちょうど犯罪検挙に於ける嫌疑者の犯行前後に於ける言動と同様だという事を、今の学者は一人も知らんから困るのだ。精神病者というものは、いくらキチガイだからといって、決して無茶苦茶な乱暴の仕方をするものでない。その発病のキッカケとなった刺戟、心理遺伝の内容、精神異常状態の深さ等によって、キッチリとした筋道を立てて、いろんな脱線をして行くもので、その間《かん》に些《すこ》しの誤魔化《ごまか》しもないから、普通人の犯罪の跡なんぞよりもずっと合理的で順序が立っている。ことに人でも殺したとなると、その兇行の前後の様子は、普通の犯罪以上に有力な参考として見なければならぬ」
「御尤《ごもっと》もで……初めて伺いました」
「この理屈を知らないもんだから、人を殺すと、イキナリ殺人狂なぞいう名前をつける。二人も殺すと尚更《なおさら》間違いないことになるんだ。……成程《なるほど》人を殺したという結果から考えると、殺人狂とでも云えるかも知れないが、その殺人狂が寒暖計の代りに人間の頭をタタキ割ったものとしたらどうだい。ハハハハハハ。それでも殺人狂と名づけ得る学者があったらお眼にかかるよ。……精神病者か
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