斗《ひきだし》は、皆、屍体の容器なので御座います。すなわちこの部屋は、九大医学部長の責任管理の下にある屍体冷蔵室で、真夏の日中と雖《いえど》も、肌膚《はだえ》が粟立つばかりの低温を保っているのでありますが、殊に只今は深夜の事とて、その気味の悪い静けさは、死人の呼吸も聞えるかと疑われるくらい……。
ここに姿を現わしました当の責任者、医学部長、若林博士が扮しました黒怪人物は、室内の冷気に打たれたものと見えまして、暫くの間、絶え入るばかりに苦しい咳《せき》を続けておりますが、そのうちにようようの事で、それを押し鎮《しず》めますと、ポケットから合鍵を取出して「七」と番号を打った屍体容器に取付けてある堅固な南京錠を取除きました。それから車仕掛になった頑丈な容器をゴロゴロと、有り合う台の上に引出しましたが、一息吐く間《ま》もなく、やおら上半身を傾けまして、全身を繃帯で棒のように巻き立てられた少女の強直屍体を、ズルズルと床の上に抱え下しました。見るとその強直屍体は、最前の仮死体の少女とは似ても似つかぬ色の黒い、醜い顔立ちではありますけれども、年恰好や背丈け、肉付き、又は生え際の具合なぞは、どうやら
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