。それをまだお白粉の残っている少女の鼻の処へ、ソロソロと近付けつつ、左手で静《しずか》に脈を取っているので御座います。申すまでもなく、これは麻酔剤を嗅《かが》しているので……あまり早く少女が覚醒しては困る事があると見えます。しかしこの少女を麻酔さしておいて、どうするつもりか……というような事は、やはり只今のところでは判明致しませぬので、そうした若林博士の行動ばかりが、愈々《いよいよ》出《い》でて、いよいよ奇怪に見えて来るばかり……。
……と思う中《うち》に、麻酔剤を嗅《か》がせ終りました若林博士は、はだけたままの少女の胸を掻き合せますと、今度はツカツカと正面の薬棚に近づいてその片隅に突込んである美濃型、日本|綴《つづり》の帳面を一冊取り出しました。その表紙には「屍体台帳……九大医学部」と大字で楷書してありまして、その表紙を開くと、各|頁《ページ》ごとに「屍体番号」「受取年月日」「引取人住所氏名」「引渡年月日」なぞいうものが、一面に行列を立てて書込んである上と下に、一々若林という検印が捺《お》してあります。……ところでその帳面の半分に近い、書込みの残っている頁まで、バラバラと繰って参り
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