え》か判明《わか》りませぬが若林博士は、今夜に限ってタッタ一人で、或る重大な、極めて秘密の仕事を決行せねばならぬ必要に迫られているのではありますまいか……否……解剖台の前後に在る二つの扉の双方ともに、鍵を挿し放しにしている事実に照しますと無論そうでなければならぬ。普通の事件で持ち込まれた屍体の解剖や検案なぞとは違った、非常的な秘密事項が今夜の仕事に含まれているに相違ない……という事が、明らかに推測されるで御座いましょう。
……と思ううちに、部屋の隅の洗面器の処へ行って、手袋を穿《は》めたままの両手を念入りに洗って参りました若林博士は、やおら身を屈《かが》めまして、寝棺の白い覆布《おおい》を取り除《の》けて、これとてもこのような室には滅多に見受けられぬ、分厚い白木の棺の蓋を開きますと、中から一個の盛装した少女の屍体を取り出しました。
前からの説明を御記憶の諸君には、最早《もはや》、この少女が何者であるかという、あらかたの御推察が付いている事と存じます。
この少女こそは、前回に御紹介致しました本事件の主人公、呉一郎の花嫁となって、華燭《かしょく》の典《てん》を挙げるばかりに相成ってお
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