者である事が、現在の状況に依って、お察し出来る事と思いますが……サテ斯様に電燈を点《つ》けてみますと……ナント諸君。ここに又一つ奇妙な事実があらわれているのに、お気付きになりませんか。
 この部屋の内部の状況は、御覧になりまする通り初めてのお方にとっては、何一つとして奇怪でないものはない。無気味でないものはない……と思われるので御座いますが、それでも今まで御覧になりましたところによって、「若林博士は何かしら解剖台に向って仕事を始めようとしているのだナ」とか「その仕事の材料になる屍体は、多分あの寝棺の中に納まっているのだナ」というぐらいの事は、もはや十分に御推察になっている事と思います。
 しかし……もし左様《さよう》と致しますれば、その若林博士の助手となるべき人間が、この部屋の中に一人も見当らないのは、どうした事で御座いましょうか。斯様《かよう》な屍体の解剖には、大抵の場合何等かの意味で、一人か二人の人間が立会っている事は、殆ど原則ともいうべき通例となっているのでありますが……にも拘わらず、御覧の通り若林博士は、そのような人間を一人も室内に近づけていないところを見ますると、何故《なにゆ
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