同博士が自分の頭蓋骨と名付くる「天然色、浮出し、発声映画撮影機の暗箱」に取付けている二つの眼球のレンズと、左右の耳朶《じだ》のマイクロフォンに、如何なる順序で、そうした事件の推移が印画されて来たかという事を、その順序通りに廻転して行くフィルムに就て説明して参ります。……【溶暗[#「溶暗」は太字]】
【字幕[#「字幕」は太字]】 九州帝国大学、法医学教室、屍体《したい》解剖室内の奇怪事……大正十五年四月二十六日夜撮影――
【説明[#「説明」は太字]】 あらわれましたる映画は御覧の通り隅から隅まで、どこがドコやら、何が何やらわかりませぬ。漆《うるし》のような闇黒《あんこく》な場面で御座います。従って説明の致しようもない訳で御座いますが、しかしよく御覧下さい。繻子《しゅす》か天鵞絨《びろうど》か、暗夜《やみよ》の鴉《からす》模様かと思われるほど真黒いスクリーンの左上の隅に、殆ど見えるか見えない位の仄青《ほのあお》い、蛍のような光りの群れが、不規則な環の形になって漂うているのが、お眼に止まりましょう。……あれは最近大流行を致しておりまする猫イラズで自殺を遂げた芸妓《げいしゃ》の胃袋の中の
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