す事が出来ない……という性格を、先祖の誰からか遺伝して来ているので、取りも直さず心理遺伝のあらわれに外《ほか》ならないから困るのだ。
 そのほか、凝《こ》り性、厭《あ》き性、ムラ気、お日和《ひより》機嫌、胴忘《どうわす》れ、神経質、何々道楽、何々キチガイ、何々中毒、男あさり、女たらし、変態心理なぞの数を尽して百人が百人、千人が千人とも多少の精神異状的傾向を持たない者はない。心理遺伝に支配されていない者はないから大変なのだ。
 この道理は吾輩がズット前に書いた「胎児の夢」という論文を読めば一層よくわかるが、人間の精神とか霊魂とかいうヤツは要するに、その先祖代々の動物や人間から遺伝して来た、色々な動物心理や民衆心理なぞの無量無辺の集まりに過ぎないのだ。その表面を「コンナ事をしたら笑われる」とか「もし見付かったら大変だ」とかいう所謂《いわゆる》人間の皮一枚で包んで、その上から又、倫理、道徳、法律、習慣なぞいうテープで縛って、社交、礼節、身分、人格なぞいう様々なリボンやレッテルで飾り立てて、更にその上からもう一つ、お化粧や油で塗りこくって、パラソルやステッキを振り廻しながら「貴殿が紳士なら拙者
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