ナハ以上に有名な正木博士がスクリーンに現われましたならば、何卒、割《われ》むばかりの拍手を以て、お迎えあらむ事を希望致します。何故かと申しますと当の御本人が非常な拍手好きで、講義中でも学生に拍手させるのを何よりの楽《たのし》みに致しておった位で御座いますから……ナニ……何ですか……スクリーンの中からじゃ、手を叩いても聞えまい……?……。アハハ。これは御尤も千万……ところが聞えるから不思議で御座います。論より証拠……たたいて御覧になればわかる事で……どこに種仕掛《たねしかけ》があるかは、眉に唾《つば》をつけて御覧になれば、すぐに、おわかりになる事と存じますが……エヘンエヘン…………。
……エエ……これが天下に有名な九州帝国大学、医学部、精神病科教授、医学博士、正木|敬之《けいし》氏で御座います。背景は九州帝国大学、精神病科本館、講堂のボールドで、白い診察服を着ておりますのは、平生の講義姿をそのままに画面にあらわしたもので御座います。
お眼止《めどま》りました通り、身長は五尺一寸キッカリしかない、色の浅黒い小男で御座いますが、丸い胡麻塩《ごましお》頭を光る程短かく刈込んだところから、高
前へ
次へ
全939ページ中376ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング