写致しましたところの狂人たちの一挙一動を御覧になりました方々の中には、必ずや意外に思われた方が、おありになるに相違ないと存じます。
「……ナアンダイ……これあ。当り前の狂人じゃないか。何もこの解放治療場に限った事はない。どこの精神病院の散歩場に行っても、こんな光景が見られるじゃないか。狂人の解放治療場という位だから、眼もはるかな広《ひろ》っ場《ぱ》に、何百か何千かわからぬ狂人の群れが、ウジャウジャして、あらん限りの狂態を演じている光景が見られるのかと思っていたが、これじゃあチットモ張合がない。第一心理遺伝なんて、どこが心理遺伝なのかサッパリ解らないじゃないか」
……と……失望、落胆、軽蔑、冷笑される方がキットお在りになる事と存じますが、まあ、そう急がずにお待ち下さい。実を申しますと正木先生の御研究に係《かかわ》る、心理遺伝の実験に使う人物はこれだけで沢山なので、この中の二三人の狂態が、如何なる心理遺伝によって演出されつつあるものであるかを、映画に就て簡単に説明致しましただけでも、世界中のありとあらゆる精神異状の原因は残らずおわかりになろうという……申さばこの十人の精神病患者は地上千万
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