」に……盧生《ろせい》が夢の五十年。実は粟飯一炊《あわめしいっすい》の間……とあるのは事実、何の不思議もない事である。
以上述ぶるところによって、タッタ一粒の細胞の霊能が、如何に絶大無限なものであるか、その中でも特に、そのタッタ一粒の「細胞の記憶力」なるものが、如何に深刻、無量なものがあるかという事実の大要が理解されるであろう。人間の精神と肉体とを同時に胎生し、作り上げて行く「細胞の記憶力」の大作用を如実に首肯されると同時に……何が胎児をそうさせたか……という「胎児の夢」の存在に関する疑問の数々も、大部分氷解されたであろうと信ずる。
胎児は母の胎内に在って、外界に対する感覚から完全に絶縁されているために、深い深い睡眠と同様の状態に在る。その間に於て、胎児の全身の細胞は盛んに分裂し、繁殖し、進化して、一斉に「人間へ人間へ」と志しつつ……先祖代々が進化して来た当時の記憶を繰返しつつ、その当時の情景を次から次へと胎児の意識に反映させつつある。しかもその胎児は、前述の通り、母胎によって完全に外界の刺戟から遮断されていると同時に、極めて平静、順調に保育されて行くために、ほかの事は全く考え
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