に否定しようとしても否定出来ない事実に直面しなければならぬ。
 その第一に挙げなければならぬのは細胞が、人間を造り上げる能力である。すなわち生命《いのち》の種子《たね》として母胎に宿った唯一粒の細胞は、前に述べた通りの順序で、分裂して生長しながら、先祖代々の進化の跡を次から次へと逐《お》うて成長して来る。あそこはああであった。ここはこうであったと思い出し思い出し、魚、蜥蜴《とかげ》、猿、人間という順序に寸分間違いなく自分自身を造り上げて来る。しかも一概には云えないが、なるべく両親の美点や長所を綜合して、すこしでも進歩したものにしようとするので、耳、目、鼻、口の位置は万人が万人同様でありながら……これは妾《あたし》の児《こ》だ。誰にも似ている。彼にも肖《に》ている。癇癪《かんしゃく》の起し具合はお父さんに生き写しだ。物覚えのいいところは妾にソックリだ……なぞと極めて細かいところまで微妙に取合せて行く。その細胞一粒一粒の記憶力の凄まじさ。相互間の共鳴力、判断力、推理力、向上心、良心、もしくは霊的芸術の批判力等の深刻さはどうであろう。更にその細胞の大集団である人間が、宇宙間の森羅万象に接して
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