……往来へ馳け出す……取押えられる。鉄の格子をゆすぶって狂いまわる……又は何々狂乱と名付けられて花四天の下に振付けられ、百載《ひゃくさい》の後《のち》までも大衆の喝釆を浴びる……という順序になる。
もっとも、これは普通の人間が普通に発狂して行く順序で、こうした傾向をチットばかり持っている人間が普通人で、多分に持っている人間を所謂《いわゆる》、精神病系統《キチガイスジ》の人間と呼んでいるに過ぎない。だから発明狂、研究狂、蒐集狂、そのほか何々狂、何々キチガイと呼ばれている人間は程度の相違こそあれ皆、このお仲間に相違ない。手当が早ければ救われ得る場合が無きにしもあらずであるが、サテコイツがモウ一段開き直って、本格の夢中遊行病となるとガラリと趣が違って来る。……無論、精神病の一種に相違ないし、その活躍ぶりも普通の狂人以上にモノスゴイものがあるのだが、しかしその当の本人は普通人とチットモ変らない。否、寧《むし》ろ、鼻の病気か何かで少々ボンヤリしていたり、頭が素敵にデリケートで学問が出来過ぎたり、気が弱過ぎて虫も殺せなかったりするような、特別|誂《あつら》えの善人の中に往々にして発見される珍病で
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