事ハ、仮令自身ニ行イタル事ト雖《いえど》モ、事実ト認ムベカラズ。記憶ニモ止《とど》ムベカラズ。
[#ここで字下げ終わり]
 ……『昨夜《ゆうべ》、君の蒲団《ふとん》を引ったくった覚えはない』なぞと頑張る連中は、この第二箇条を厳守している正直者に相違ない。
 ところで右の二箇条は、現在の精神病学界で二重圏点付きの重大疑問となっている『ねぼけ[#「ねぼけ」に傍点]状態』を引き起す規約である。むろん普通のアタマの人間にも、よくある事だし、文句も簡潔だから記憶し易いが、第三条となると御覧の通り、文句が少々ヤヤコシイようである。しかし意味は前の二箇条と同様すこぶる簡明である。すなわち……
『脳髄の反射交感機能に異状が起った場合には、脳髄の無い下等動物と同様に、脳髄以外の全身の細胞の反射交感作用を脳髄の代りに活躍させよ』
 という意味の規約で、いわば脳髄の非常時に対する応急手段とでもいおうか。……しかも彼《か》の『物を考える脳髄』が今日まで、幽霊、妖怪、幻覚錯覚、精神異状、泣き中気《ちゅうき》、笑い中気、夢中遊行、朦朧《もうろう》状態なぞいうあらゆる超科学的、もしくは超説明的な怪現象を演出して、全
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