飽き果てていた尖端人種は、これを聞くや否や大喝采裡に共鳴した。吾《わ》れも吾れもとヘポメニアス氏の迷説を丸呑みにした。『脳髄は物を考えるところ』という錯覚を、プレミヤム付きで迷信してしまった。
「そうだそうだ。この世界には神様なんか存在しないんだ。すべては物質の作用に外ならないんだ。吾々は吾々の頭蓋骨の中に在る蛋白質の化学作用でもって、新しい唯物文化を創造して行《ゆく》んだぞッ……」
 ……と……。

 かくして物の美事に人間世界から神様を抹消《ノックアウト》した『物を考える脳髄』は、引続いて人間を大自然界に反逆させた。そうして人間のための唯物文化を創造し初めた。
 脳髄はまず人間のためにアラユル武器を考え出して殺し合いを容易にしてやった。
 あらゆる医術を開拓して自然の健康法に反逆させ、病人を殖《ふや》し、産児制限を自由自在にしてやった。
 あらゆる器械を走らせて世界を狭くしてやった。
 あらゆる光りを工夫し出して、太陽と、月と、星を駆逐してやった。
 そうして自然の児《こ》である人間を片《かた》っ端《ぱし》から、鉄と石の理詰めの家に潜り込ませた。瓦斯《ガス》と電気の中に呼吸させて動
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