からないわからない。いったい僕の脳髄は今まで何をしていたのだろう……何を考えていたのだろう」とか又は「僕の脳髄が僕の全身を支配しているのか……それとも僕の全身が僕の脳髄を支配しているのか……解らない解らない」……といったような事を口走っては、蓬々《ぼうぼう》と伸びた自分の頭の毛を掻きまわしたり、拳固《げんこ》でコツンコツンと後頭部をなぐり付けたりしいしい、一分間も休まずに、部屋の中をグルグルと歩きまわっているのだ。
ところが、そのうちに、ソンナ発作がダンダンと高潮して来るとポカン博士は、やがて部屋のマン中の人造石の床の上に立止まって不思議そうにキョロキョロとそこいらを見廻わし初める。そうして自分の蓬々たる頭の毛の中から、何かしら眼に見えないものを掴み出して、床の上に力一パイ叩きつける真似をする。それからその床の上にタタキ付けたものを指して、脳髄に関する演説を滔々《とうとう》と、身振《ゼスチュア》まじりに初めるのであるが、そのうちに自分の演説に感激して、興奮の絶頂《クライマクス》に達して来ると、ツイ今しがた自分の頭の中から掴み出して床の上にタタキ付けた眼に見えない或るものを、片足を揚げ
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