させて。どこの苦労に注射をするやら。どこの心配|切解《せっかい》するやら。癇《かん》の虫見る眼鏡も無ければ。あなた恋しで上った熱度が。寒暖計にも上った事かや。贋《にせ》のキチガイ真実《ほんと》のキチガイ。レントゲンでも透かして見えない。声も聞えず姿も見えない。屁《へ》より不思議な心の正体。これがどうして診察されよか。馬鹿に附けよう薬は無いと。昔の譬《たと》えは今でも真実《ほんま》じゃ。つまるところが精神病は。診察治療が絶対不可能。科学知識で研究出来ない。わけのわからぬ物じゃとわかる……スカラカ、チャカポコ。チャカポコチャカポコ……
▼あ――ア。わけのわからぬ物じゃと解かると。ここでも一つ理屈のわからぬ。奇妙不思議な事実に気が付く。そもやソモソモ一体全体。人の精神、心の狂いは。診察、治療が出来ぬとなったら。現在世界のどこでもここでも。精神病院、神経治療じゃ。又は瘋癲《ふうてん》、脳病院じゃと。四角四面の看板ひろげて。意匠|凝《こ》らした玄関構えじゃ。高価《たか》い診察、治療の代《しろ》だよ。入院、看護の料金取り立て。肩で風切る精神病医は。どんな仕事をしているものかや。あれは詐欺師《やま
前へ
次へ
全939ページ中186ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング