ドン
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)懲《こら》
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たいそうあたたかくなりました。
猫が久し振りにあたたかくなったので縁側に出て見ると、縁側の鉢の中にいる金魚が五、六匹チラチラしています。これは占めた、どうかして取って食べてやろうと思ってジッと鉢の中を狙いました。
犬がこれを見つけて、これはうまいと思いました。ふだんから憎らしいと思う猫が今日は全く気がつかずにいる。今度こそは引っ捕えてひどい目に合わせて遣ろうと、猫に気のつかぬようにそっとうしろから忍び寄りました。
二階の窓から坊ちゃんがこれを見つけて、あの憎らしい犬が又猫をいじめてやろうとしている。今日こそは勘弁しないぞと、空気銃にバラ玉を込めて犬のお尻の処をジット狙いました。
その時お父さまがこれを見つけて、又坊やがいたずらをしている。よその犬に怪我をさせては大変だ。よしよし捕まえて懲《こら》して遣ろうと、ぬき足さし足うしろから近寄ってお出でになりました。
室の隅で縫い物をしていらっしたお母様はお父様の様子に気がついて、どうしたのかと思って窓の外を見ると、猫は金魚をねらい、
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