犬は猫のすぐ後に近寄り、坊ちゃんは犬のお尻を狙って引き金を引こうとし、お父様は坊ちゃんの襟を捕まえようとしておられます。うっかりすると金魚も猫も犬も坊ちゃんもみんなひどい目に合いそうです。お母様はどうしてよいやらわからなくなりました。
 その時にすぐ近所の砲台で耳も裂ける位大きなドンが鳴りました。
 金魚は驚いて石の下へ逃げ込みました。
 猫はガッカリしてうしろをふり返ると、犬がすぐ足もとにいたので驚いて家の中へ逃げ込みました。
 犬はしまったと思って縁側に飛び上ると、空気銃の弾丸が尻尾のさきをカスッたので驚いて逃げて行きました。
 坊ちゃんはガッカリしてうしろを見ますと、お父様が怖い顔をして立っておられたので、
「あれ。堪忍して頂戴」
 と言うなりに空気銃を投げ出して逃げて行きました。
「アハハハハハ」
 とお父様はお笑いになりました。
 お母様はホッとしました。
 それから間もなく金魚は餌《え》を投げて貰いました。
 猫も犬も御飯をいただきました。
 その時お父様もお母様も坊ちゃんも楽しいお昼の御飯を食べていました。



底本:「夢野久作全集7」三一書房
   1970(昭和45
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