とたたき殺すぞ」
と言いました。
「勘弁して下さい。お金は一文もありません」
と坊さんはふるえながら申しました。しかし泥棒たちは承知しません。
「こん畜生、又嘘を吐《つ》く。お金がないのに何で音がするんだ。さあ出せ。早く出せ」
と言っているうちにお庭の方に風が吹いて、チャランチャランと言う音がしました。
「あッ。お金はあそこにある」
と一人が樫の木の方へ駈け出しますと、みんなあとからつづいて駈けて行きました。
これを見た坊さんは肝《きも》を潰《つぶ》して思わず、
「アッ。そっちにはお金はありません、ありません」
と言いながらあとからかけて来ました。
一人の若い者はふり返って睨みつけました。
「ソレ見ろ。こっちになければほかのところにあるのだろう。こんちくしょう、早く言え」
と言うなり坊さんを押えつけて鉈をふり上げました。
「ぶち殺せ、ぶち殺せ」
とほかのものも鎌や棒をふり上げました。
坊さんはしかたなしにとうとうほんとのことを言いました。
「助けて下さい、助けて下さい。本当のことを申します、本当のことを申します。この樫の木の下に埋めてあるのです。ウソだと思うなら掘っ
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