が次第に賑《にぎ》やかになって参りました。
ところが忘れもしませんその二十五の夏の事でした。最前お話しました新聞社の飛行機が、突然に私の家《うち》の上を横切りましたのは……。
その時の子供たちの脅《おび》えようといったらありませんでした。ちょうど私は家《うち》の前の草原《くさはら》に、放射状の花壇を作って、山から採って来た高山植物を植えかけておりましたが、思いがけない西北の方角から、遠雷のような物音が近付いて来ますと、踊るような恰好をして逃げ迷っている子供等と一所に、慌てて家《うち》の中へ逃げ込んだものです。そうして軒下《のきした》に積んだ寝床用の枯草の中から、青い青い石狩岳の上空に消え失せて行く機影を見送っているうちに何か知らタマラない不吉な予感に襲われましたので、ホーッと溜息を吐《つ》いておりますと、その背後から久美子もソッと不安気な顔をさし出して、
「妾《わたし》達を探しに来たのじゃないでしょうか」
と云ったものです。それを聞くと私は、思わずドキンとしましたが、しかし顔ではサリ気なく微苦笑しまして、
「ナアニ。俺たちみたような人間を探すのに、ワザワザあんな大袈裟な事をするも
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