からだ》はやがて落下傘《パラシュート》のおかげでフンワリと空中に浮かみました。それと一所に烈しく吹く風につれて、大空高く高く高く舞い上りましたが、その中《うち》に雨がバラバラと降り出しました。
 そうすると又大変です。落下傘《パラシュート》は紙で作ってあった物とみえまして、見る見るうちにバラバラに破れてしまいましたからたまりません。
 二人は抱き合ったまま流星のように早く、下界《した》の方へ落ちて行きました。
「アレッ。助けて」
 と姫は思わず大きな声で叫びましたが、その自分の声に驚いて眼をさましますと、どうでしょう。今までのはスッカリ夢で、姫はやっぱり自分のお城の石の牢屋の中に寝ているのでした。
 姫はどちらが夢だかわからなくなってしまいました。
 あんまりの不思議さに、立ち上って石の牢屋の四方を撫でまわしてみましたが、四方はつめたい石で穴も何もありません。上の方へ手をやってみますと、天井もすぐ手のとどくところにありましたが、そこにも抜け出られるようなところが一つもありません。
 あんまりの奇妙さに、姫はボンヤリして、石の床の上に坐わっていました。
 すると間もなく向うにあかりがさし
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