、蜘蛛が! おお、気味のわるい」
と王様とお妃は一度に云われました。
「ところがそれがちっとも気味わるくないのです。東の方の壁に並んでいる蜘蛛はみんな黄金《きん》色で、西の方のはすっかり白銀《ぎん》色なのです。そのピカピカ光って美しいこと。そうして黄金《きん》色の蜘蛛のお尻からは黄金《きん》色の糸が出ているし、白銀《ぎん》色の蜘蛛のお尻からは白銀《ぎん》色の糸が出ているのを、二人の女中が一人ずつ糸車にかけて、ブーンブーンと撚《よ》って糸を作っているのです。その面白くて奇麗だったこと……」
「フーム。それは不思議なことだな」
「まだ不思議なことがあるのです。その糸を巻きつけた糸巻きがだんだん大きくなって来ますと、その糸の光りで室中が真昼のように明るくなります。私はあんまりの不思議さにビックリして思わず外から……その糸をどうするの……と尋ねました」
「そうしたら何と返事をしたの」
とお妃様がお尋ねになりました。
「そうしたら、返事をしないのです」
「どうして」
「二人の女中はビックリして私の方を見ました。その拍子《ひょうし》に今までブンブンまわっていた二人の女中の糸巻きが急にあべこべに
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