姫を手を引っぱりながら奥の方へあるき出しました。
 ところがその奥の方へ行く廊下の長いこと。右へ曲ったり左へ曲ったり、梯子段を登ったり降りたり、いつまでもいつまでも続いています。そうして連れて行く王様夫婦も、あとから随《つ》いて来る大将たちも、やっぱりだまって一口も物を云いません。
 姫は又、
「妾をどうなさるのですか」
 ときいてみたくなりましたが、やっぱり我慢をしていますと、やがて一つの立派な室に這入りました。
 その室もピカピカ光って鉄ばかりで出来ておりまして、真ん中に鉄の大きなテーブルがあり、その上に大きいのや小さいのやいろんな鉄の壺と、それからコップや盃見たようなものが沢山に並んでいて、その真ん中あたりにある椅子に姫が腰をかけさせられますと、その右と左に王様夫婦が坐わりました。あとはお伴をして来た鉄の城の大将たちが、机の四方を取かこんでズラリと腰をかけます。そうしてみんな坐わってしまうと、入口から四人の黒ん坊の女が白い着物を着て出て来まして、真中にある一番大きな鉄の壺から、みんなの前の鉄の盃へ一パイになるように白い牛乳のようなものを注《つ》いでまいりました。
 その白い汁の芳
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