の雲雀や蛙の口のように、もっとやっぱりあたしよりもずっとひどいオシャベリがいて、あたしをシャベリ負かしていじめるに違いない。そうしてオシャベリさえしなければきっと親切にしてもらえるに違いない」
 とこう思いながら、オシャベリ姫は蔦葛にすがって崖を降りはじめました。
 初めのうちは崖がデコボコしているので、オシャベリ姫はちょうど段々を降りるようにして蔦葛にすがりながら降りてゆきましたが、だんだん下の方になりますと崖が急になって、しまいには全く宙にブラ下ってしまいました。姫はこわくなって引返そうとしましたが、もう引返す力が抜けてしまいまして、姫はあまりの恐ろしさに蔦葛にすがりながら泣き出しました。
 その声をききつけたものか、はるか崖の下の草原《くさはら》へ大勢の人が出て姫の姿を見上げていましたが、崖があんまり高いので、そんな人たちがまるで蟻のように見えました。
 これを見ると姫は一層恐ろしくなって、手と足で蔓《つる》にかじり付いてブルブルふるえていますと、その中《うち》にはるか下の方から姫の掴まっていた蔦葛を伝って昇って来るものがあります。だんだん近づいて見ますと、それは黒い服にズボンを
前へ 次へ
全53ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング