「お前がルルの妹かや。お前が……お前が……まあ、何という可愛らしい娘であろう。ルルがお前のことをなつかしがるのも無理はない。悲しむのも無理はない。
 お前も嘸《さぞ》悲しかったであろう。淋しかったであろう。そうして私を怨んでいたであろう。
 許してたもれや。許してたもれや」
 女王様は水晶のような涙の玉をハラハラとミミの髪毛の上に落されました。
 ミミは泣きじゃくりながら顔を上げて、女王様に尋ねました。
「女王様。女王様はほんとうに……私たちを陸《おか》へ帰して下さいますでしょうか」
「ほんとうともほんとうとも。私が今云うたひとり言はみな偽りでないぞや。
 あのルルが来て、あの噴水を直してくれなければ、この湖の中のものは皆死ななければならぬ。それゆえルルを呼びました。それゆえお前にも悲しい思いをさせました。どうぞどうぞ許してたもれや。それにしてもおまえはよう来ました。よう兄さまを迎えに来ました。きっと二人は陸《おか》に帰して上げますぞや。お前たちのお父さんのように悪い魚にたべられぬようにして……そうして、陸《おか》に帰ったならば鐘も鳴るようにして上げますぞや。
 なれども、ルルがあの
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