も鳴るようにしてやりましょう――。
――ああ、ほんとに可哀そうなことをしました」
この時、ミミはルルの歌の声をたよりに、やっと女王様のお室《へや》の前までたどりついておりました。そうして、女王様のひとり言をすっかりきいてしまったのでした。
ミミは、女王様がルルとミミのことを可愛そうに思っておられる……そうしてルルを陸《おか》に帰してやろうと考えておられることを知りますと、胸が一パイになりました。
その時、女王様は立ち上って、寝部屋《ねべや》へ行こうとされました。
ミミは思わず駈け込んで、女王様の長い長い着物の裾に走り寄りました。
女王様はビックリしてふり向かれました。……ここは当り前の人間がたやすく来るところではないのに……と思いながら
「お前はどこの娘かね……」
とお尋ねになりました。
ミミは品よくお辞儀をしました。そうして、涙を一パイ眼に溜めながらお願いしました。
「私はミミと申します。ルル兄様に会いにまいりました。どうぞ会わせて下さいませ」
「オオ。お前がルルの妹かや」
と、女王様はミミを抱寄せられました。そうして、しっかりと抱きしめて、静かな声で云われました。
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