士方の裏面を御研究になったのですからね。もっとも貴女が研究の対象としてお選びになった方々の全部は、そうした紳士道を心得ている外国人や、秘密行動に慣れた貴顕紳士に限られておりましたので、そんな御研究の内容が今日まで一度も外へ洩れなかった訳ですがね……実は貴女の御聡明に敬服しているのですが」
「ホホホホ。貴方の仰言《おっしゃ》る資本主義末期の女でしょうよ。……ですけど……よくお調べになりましたのね」
私は相手が意外に早く兜を脱いでくれたので内心ホッとさせられた。同時に、こうした仕事に対する私の「顔」の効果《ききめ》を自認しない訳には行かなかった。
「……僕は……その末期資本主義社会の寄生虫ですからね」
「……まあ……でも、お話と仰言るのは、それだけでしょうか」
「……モット買って頂けるでしょうか」
「……ええ……なにほどでも……チビリチビリだとかえって御面倒じゃないでしょうか」
「……御尤《ごもっとも》です……では全部纏めまして、おいくら位……」
「貴方の新聞をやめて頂くぐらい……」
「ハハハ。御存じでしたか。それじゃ、すこしお負けしておきましょう。ええと……只今二百五十七号を二千部ほど
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