団にもぐり込んでしまいました。
「アラ、五郎さんはまだ寝ているよ。何て強情な児でしょう。よしよし、今にきっとお腹が空いておきて来るだろうから」
とお母様は独り言を云って、台所の方へお出でになりました。五郎さんは可笑《おか》しくて堪らず、蒲団の中でクスクス笑いましたが、そのうちにうとうと睡ってしまいました。
するとやがて何だか恐ろしく苦しくなって来ましたので、どうしたのかと眼を開いて見ますと、いつ日が暮れたのか、あたりは真暗になっていて何も見えません。その中《うち》に最前喰べたお菓子連中が、めいめい赤や青や紫や黄色や又は金銀の着物を着て、男や女の役者姿になって大勢|居並《いなら》んでいるのがはっきりと見えました。
「こんなに大勢、一時にお菓子たちがお腹《なか》の中で揃った事は無いわねえ」
とお嬢さん姿のキャラメルが云いました。
「そうだ、そうだ。それに五郎さんの胃袋は大変に大きいから愉快だ」
と道化役者のドロップが云いました。黒ん坊のチョコレートは立ち上って、
「一つお祝いにダンスをやろうではないか」
と云うと、ウエファース嬢が、
「それがいい、それがいい」
「万歳万歳、賛成賛
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