引續き元素分析やその他の化學的性質を試驗した。
「オリザニン」の結晶を一瓦も作るには、少くとも數百貫目の糠より出發せねばならないが幸に三共會社から注射用の強力「オリザニン」を多量に供給されたから出來たのである。一方また大嶽君の實驗の巧妙なのと、根氣のよいのには驚くべきものがあつた。
 今後Bの結晶の化學的構造を決定し、これを合成するのは何年かゝるか知らないが、兎に角結晶となつたのは、化學者の一大收獲である。

 脚氣問題を別として、オリザニンが果して榮養上の一新成分であるか、どうかと云ふことも隨分議論があつた、それは動物の榮養を支配する條件が澤山あつて、蛋白の種類とか、分量とか、或は無機成分中、微量のもので見逃して居るものはないかとか、リポイドが必要であるとか、ないとか、いろ/\判らないことが多かつたからである。
 米國でオスボルンやメンデル博士などは一九一四年までヴィタミン不必要を唱へ、ベルリン時代の私の學友アプデルハルデン氏も數年間反證を擧ぐる爲に實驗をやつた。ローマン博士は一九一七年まで頑強にヴィタミン説に反對したものである。兎に角、一つの學説が一般に承認せらるゝのは、なか/\容
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