長に少からぬ信用を得て、時々夜など社宅に呼ばれることがある、ほかの同輩はそれを非常に嫌に思うている。
私は性来の無口、それに人との交際《つきあい》が下手で一たび隔った心は、いつ調和《おりあい》がつくということもなく日に疎《うと》ましくなって行く、磯助役を始め同輩の者はこのごろろくろく口を聞くこともまれである。私はこんなに同輩から疎まれるとともに親しい一人の友が出来た、それはかの飄浪《さすらい》の少年であった。
このごろの寒空に吹きさらされてさすがに堪えかねるのであろう。日あたりのいい停車場の廊下に来て、うずくまっては例の子守女にからかわれている、雪の降る日、氷雪《みぞれ》の日、少年は人力車夫の待合に行って焚火《たきび》にあたることを許される。
少年は三日におかず来る、私は暇さえあればこの小さい飄浪者を相手にいろいろの話をして、辛くあたる同輩の刃のような口を避けた。私はいつか千代子と行き会ったかの橋の欄干《おばしま》に倚《よ》って、冬枯れの曠野《ひろの》にションボリと孤独《ひとりみ》の寂寥《さみしさ》を心ゆくまでに味わうことも幾たびかであった。
十八
寂しい冬の日は
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