は》じ、世をかねる若い心をあわれと思ったからであろう。その話の大概《あらまし》はこうであった。
小林というのは駅長の郷里で一番の旧家でまた有名な資産家であった先代に男の子がなくて娘ばかり三人、総領のお幾というのが弥吉という婿《むこ》を迎えて、あとの娘二人はそれぞれよそに嫁《かた》づいてしもうた。この弥吉とお幾との間に出来たのがかの小林浩平で、駅長とは竹馬の友であった。
ところがお幾は浩平を産むととかく病身で、彼がやっと六歳の時に病死してしもうた。弥吉もまだ年齢は若いし、独身で暮すわけにも行かないので、小林の血統《ちすじ》から後妻《のちぞい》を迎えておだやかに暮して行くうちに後妻にも男の子が二人も生まれた。
弥吉は性来義理固い男で、浩平は小林家の一粒種だというので、かりそめの病気にも非常に気を揉《も》んで、後妻に出来た子どもとは比較にならないほど大切にする。妻も無教育な女にしては珍らしい心がけの女で夫の処致を夢さら悪く思うようなことなく、実子はさて措《お》いて浩平に尽すという風で、世間の評判もよく弥吉も妻の仕打ちを非常に満足に想うていた。
ところが浩平が成長して見ると誰の気質を受
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