》だよ。」と彼は言った。「あいつ[#「あいつ」に傍点]は悪い奴だ。が、あいつをけしかけたもっと悪い奴がいるのだ。でな、己がどうにかして逃げられねえで、奴らが己に黒丸をさしつけたらな、いいかね、奴らの狙ってるのは己の古い衣類箱なんだよ。お前、馬に乗ってな、――乗れるね、乗れるかな? うむ、よしよし、じゃあ、馬に乗ってな、行くんだ、――そのう、なあに、言っちまえ! ――あのいまいましい医者の阿呆んとこへ行って、みんなを――治安判事だの何だのを――呼び集めてくれって話すんだ。そうすれぁ、あの男は『|ベンボー提督《アドミラル・ベンボー》屋』へ押しかけて来て――奴らをひっ捕えてくれるだろう、――フリントの船員をそっくりみんな、残ってる奴らみんなをな。己は一等運転士だったんだ、己はな。フリントの一等運転士だったのだ。そしてあの場所を知ってるのは己一人なんだよ。あの人は、今の己みてえに死にかけていた時に、サヴァナ(註一八)であれを己にくれたのだ。だがな、奴らが黒丸を己んとこへ持って来るまでは、それとも、お前がまた黒犬か、一本脚の船乗をだ、ジム、――ことに其奴《そやつ》だぜ、――其奴らを見るまでは、お
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